HISTORY   

おせん

第17回

おせん

こよい天満のはしばしきけば、天満の天満のはしばしきけば、涙たる屋のおせんの話、問うも語るも袖の涙--------
俺たちも古典とかやってみたい!!ただそれだけの理由で今回は江戸時代の作家井原西鶴の『好色五人女』より樽屋おせんの物語を元にお芝居を作ってお贈りいたします。好色女と言ってもスケベな女性の話ではございませんよ。恋に生きる女性の話でございます。

会場
下北沢 シアター711
日程
2015年10月30日(金)~11月1日(日)
キャスト
伊藤 総、佐藤銀平、佐野陽一
スタッフ
原作/井原西鶴(好色五人女より) 台本+演出/早船聡+サスペンデッズ
照明/吉村愛子(Fantasista?ish) 衣裳/大野典子 音響協力/平井隆史
舞台協力/大友圭一郎+金子裕明 イラストレーション/木村タカヒロ
宣伝美術/野島敏光 WEB/rhythmicsequences
制作/上田郁子(オフィス・ムベ)
夜と森のミュンヒハウゼン

第16回

夜と森のミュンヒハウゼン

この森の深い闇はあらゆる物事の輪郭を無くすと言う。自分が今ここにいるのか、または以前ここにいたのか、呑み込まれてしまったのか、呑み込んでしまったのかもわからず、ただ木々の沈黙を聞いていると、どうしようもないこの身体が闇に染み出して溶けてなくなるまで、私はここにじっとしていたいと思った。

会場
吉祥寺シアター
日程
2015年1月24日(土)~2月1日(日)
キャスト
佐野陽一、伊藤総、有山尚宏、白州本樹、石村みか、冠野智美、
地村瑞穂、磯部莉菜子
スタッフ
作・演出/早船聡 美術/長田佳代子 照明/工藤雅弘(Fantasista?ish)
音響/平井隆史 衣裳/大野典子 音楽/園田容子 振付/中村 蓉
振付アシスタント/仁科幸 舞台監督/大友圭一郎 + 伊藤新
イラストレーション/木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
舞台撮影/滝沢浩司 舞台写真/渡辺大祐 WEB/rhythmicsequences
制作/上田郁子(オフィス・ムベ) 制作助手/石川はるか(ハイリンド)
白紙委任状

第15回

白紙委任状

あいつは抑えられないのだ。人が見ていても、見ていなくても。
僕も抑えられないのだ。自分が許しても、許さなくても。
でも、僕はあいつとは違うのだ。あいつは意味の無いことを叫ぶ。僕も意味の無いことを叫ぶ。
叫んで暴れるが、あいつとは違う。あいつは取り除かれるべき、特別な存在で、僕は違うのだ。
と思うんだけど、あの子が言うには二人とも一緒だと言うのだ。
あいつをそんな目で見ないで“僕たちは”って言えたら、明日は違うのにね、と。

会場
下北沢OFF・OFFシアター
日程
2014年7月8日(火)~13日(日)
キャスト
伊藤総、佐藤銀平、佐野陽一、早船聡
スタッフ
作・演出/早船聡 + サスペンデッズ 照明/工藤雅弘(Fantasista?ish)
照明操作/野邉紗保莉 音響/平井隆史 衣裳/大野典子
舞台監督/大友圭一郎 + 淡嶋恵 美術協力/長田佳代子 振付協力/中村蓉
イラストレーション/木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
写真撮影/渡辺大祐 制作/上田郁子(オフィス・ムベ)
さよならを教えて

第14回

さよならを教えて

ベランダの鉢植が枯れている。何を植えたのかも忘れた。 私は誰と一緒にいるのだろう。 靴下を干そうとしたら、古い洗濯バサミが割れて砕けた。 ハンドルが濡れている。僕の汗なのか、車の汗なのか。 彼女は誰に話しかけていたのだろう。新聞の来ない朝。二人きりの食卓。 カチカチとウインカーに案内されて、彼女から離れていく。 ドアのない部屋。脚のないテーブル。 日が落ちたのに電気もつけず座っている。 彼が話しかけていたのは誰? 私ではない。私の中の誰か。私がつくった誰か。

昼休みの公園で、彼女が作ったお弁当を食べたら、 僕の中の奥の方の、どうしようもないやつを殺す薬が入っていた。 なんて考えながらコンビニのパンを食べる。 そんな薬があればと思う。 でもそれは彼のためじゃなくて私の中の誰かのために。 そうしたら、もう一度出会えるかしら。 そうしたら出会えるだろうか。 もう 一度

会場
ザ・スズナリ
日程
2013年12月4日(水)~9日(月)
キャスト
佐野陽一、野々村のん、白州本樹、岩本えり、西園泰博、山田キヌヲ、
扇田森也
スタッフ
美術/長田佳代子 舞台監督/大友圭一郎+ 伊藤新
照明/工藤雅弘(Fantasista?ish) 音響/平井隆史(末広寿司)
音響操作/太田智子 衣装/大野典子 イラストレーション/木村タカヒロ
宣伝美術/野島敏光 企画・製作/サスペンデッズ
制作/上田郁子(オフィス・ムベ) 制作助手/石川はるか(ハイリンド)
エレノア

第13回

エレノア

私の周りには薄い膜が張られていて、何を言っても誰にも聞こえない。私が思ったことはそれに撥ねかえり違う言葉になって戻ってくる。そもそも何を思っていたのか、なぜそう思ったのか。今夜、電車で前の席に座った人達の顔――― 一番端は20代半ばの男。26くらい。でも本当は40を超えているのかも知れない。40を超えているのに26に見える男。責任を負ってこなかったんだ、きっと、だからあんなに若く見える。その隣も男。本を読んでいた。58才。時代小説。ピカピカの靴に、天気予報を信じて長い傘。妻が持たせたのだろう。男の顔は思い出せないが、妻の顔は思い出すことができる。どこかで会ったことがあるのかも知れない。

その次は綺麗な人。私と同じくらいの年。そろった指先、綺麗な手。マニキュアを乾かしてる間に彼女が考えることを想像する。行ったことのないヘルシンキの夜。それから犬のこと。その次も男。何も思い出せない。全く印象のない男。しかし彼のせいじゃない。印象を持てないのは私の側の責任。その隣は女。嫌な女。嫌な女はどうしてあんなに嫌なんだろう。一番好きな女は一番好きな男より好きだけど、一番嫌いな女は一番嫌いな男より嫌い。最後の人とは目が合った。私を見ていた。いや、見ているようで何も見ていなかった。ガラス球の目。彼女も薄い膜の中にいた。彼女の視線が人々に向き、よく見ると、皆膜の中にいた。私たち皆、一人一人、交わることのない膜の中にいる。そう彼女の口が言った。

会場
下北沢駅前劇場
日程
2013年4月26日(金)~5月3日(金・祝)
キャスト
佐野陽一、佐藤銀平、伊藤総
野々村のん、ともさと衣、山下真琴、一色凉太
スタッフ
美術/長田佳代子 舞台監督/大友圭一郎
照明/工藤雅弘(Fantasista?ish) 音響/平井隆史(末広寿司)
衣装/大野典子 イラストレーション/木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
企画・製作/サスペンデッズ 制作/上田郁子(オフィス・ムベ)
制作助手/石川はるか(ハイリンド)
ちょうちん

東京福袋『ちょうちん』

会場
東京劇術劇場シアターウエスト
日程
2012年9月2日(日)~9日(日)
サスペンデッズは7日(金)のみ
キャスト
佐藤銀平、伊藤総、佐野陽一
関寛之、間瀬英正
スタッフ
制作/上田郁子(オフィス・ムベ)
GO HOME

第12回

GO HOME

大海をめぐり、難をのがれ、鮭たちは生まれた川に帰ってくる。彼らの産卵は一生に一度。射精も一度。ただ一度のために帰ってくるのだ。

果たしたのちは身体を横たえ、静かに死を待つ。朽ちていく身体は川の栄養となり、やがて生まれてくる稚魚を育てる。川底の宇宙。彼らはどこまで承知なのだろうか?

会場
吉祥寺シアター
日程
2012年6月15日(金)~24日(日)
キャスト
佐藤銀平、伊藤総、佐野陽一
鈴木理保、橘麦、間瀬英正、千葉沙織、新田めぐみ、白州本樹
スタッフ
美術/長田佳代子 舞台監督/大友圭一郎
照明/工藤雅弘(Fantasista?ish) 音響/平井隆史(末広寿司)
衣装/大野典子 イラストレーション/木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
企画・製作/サスペンデッズ・吉祥寺シアター
制作/上田郁子(オフィス・ムベ)・石川はるか(ハイリンド)
g

第11回

g

いつのことだったか誰かが教えてくれた。人には色々なものに生まれかわる。犬や猫や木や草や花、あるいは石や土や水、ありとあらゆるものに。

ものの他にも時間や言葉や光や暗闇に。ぐるぐる廻る。もちろんそれを信じちゃいないが、そういうことなら公平で良いかなとも思う。

会場
ザ・スズナリ
日程
2011年8月4日(木)~7日(日)
キャスト
伊藤総、佐野陽一、佐藤銀平
田口朋子、尾浜義男、白州本樹
スタッフ
美術/長田佳代子 舞台監督/大友圭一郎
照明/工藤雅弘(Fantasista?ish) 音響/平井隆史(末広寿司)
衣装/大野典子 イラストレーション/木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
企画・製作/サスペンデッズ
制作/上田郁子(オフィス・ムベ)・石川はるか(ハイリンド)
カラスの国

第10回

カラスの国

路地裏にカラスが舞い降りて人になるのを見た。一瞬目が合ったけれど、カァーと一声鳴いて地下鉄に消えた。言うなよと聞こえたので今まで誰にも言わなかったが、今日ベランダにやって来たカラスがどうやらあの時の人物のようで、同じ声でカァーと鳴き、僕をどこかに誘っている。きっと僕の番なのだろう。

会場
シアタートラム
日程
2011年3月17日(木)~23日(水)
キャスト
佐野陽一、伊藤総、佐藤銀平
石村みか、柿丸美智恵、冠野智美、渋谷はるか、白州本樹、三田村周三
スタッフ
美術/長田佳代子 舞台監督/大友圭一郎
照明/工藤雅弘(Fantasista?ish) 音響/平井隆史(末広寿司)
衣装/大野典子 イラストレーション/木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
企画・製作/サスペンデッズ&世田谷パブリックシアター
制作/上田郁子(オフィス・ムベ)・石川はるか(ハイリンド)
グロリア

第9回

グロリア

1945年より前の日本を想像するのは難しい。当時を知る人に話を聞いても、それって本当にあった話ですか?と耳を疑いたくなる。一体そこはどんな世界だったのか。でも実は現在だって同じなのだ。世界のどこかでは想像も出来ないようなことが起きている、らしい。

終戦間際、日本軍は風船に爆弾をぶら下げて海岸から飛ばし、アメリカを爆撃しようとしたそうだ。至って真面目に。その風船を作っていたのは少女たちで、そのうちの1つがアメリカで1人の女性と5人の少年少女を殺した。この話は1944年の東京と1945年のオレゴン、それと2010年の日本が舞台です。

会場
下北沢「劇」小劇場
日程
2010年10月14日(木)~24日(日)
キャスト
佐藤銀平、伊藤総、佐野陽一
伊原農、枝元萌、多根周作、はざまみゆき
スタッフ
舞台監督/井関景太・深沢亜美(るうと工房)
照明/石島奈津子(東京舞台照明) 音響/平井隆史(末広寿司)
美術/向井登子 衣装/大野典子 映像/タケウチヤスコ(朝焼けダイブ)
宣伝美術/西山昭彦 アートワーク/木村タカヒロ スチール/夏生かれん
撮影ヘアメイク/田沢麻利子
Webデザイン/藪地健司・夏子(ハイリンド)
企画・製作/ハイリンド+サスペンデッズ
制作/上田郁子(オフィス・ムベ)・石川はるか(ハイリンド)
制作協力/山本亜希
2010億光年

第8回

2010億光年

道路に面したコーヒーショップのカウンター。深夜。
右隣ではOLが熱心に小説を読んでいる。左は道路工事のお兄さんが休憩の途中、コーヒーをちびちび暖をとっている。道行く人々。恋人たちの距離は近い。物理的にも、おそらく精神的にも。そこである夫婦を思い出す。昔あんなに仲が良かったのに、今では口もきかない、確かに彼らは愛し合っていた、確か、かつて。またある友人を思い出す。
彼は今、父親も母親も兄も姉もどこにいるのか知らないと言う。小さい頃は年に二回の家族旅行。写真も見せてもらった。

またそれでこんなことを思い出す。物理学では確か、光速に近づくと時間がゆっくり進むとか、それは例えばジェット機に乗っても何億分の一秒だかゆっくり進むようになると。という事は僕たちは皆、実は全く違う時間を生きているのではないかとかなんとか…と、不意にOLが僕に話しかけた。まだやってる本屋を知りません?この作家の他の作品が読みたいの。え?すると左の兄さんがすかさず、知ってるよ、ここ。ナプキンに何か書いて渡した。ありがとうとOL。笑顔。スローモーションで笑顔、二人とも。彼らの時間は今確かに重なって、恋が芽生えた。僕はそれを見た。
願わくば、物理学なんかに負けないで欲しい。

会場
東京芸術劇場小ホール2
日程
2010年5月22日(土)~30日(日)
キャスト
佐藤銀平、伊藤総、佐野陽一
細越みちこ、太田紘子、新田めぐみ、関寛之、尾浜義男、伊藤俊輔、
白州本樹、高橋理恵子
スタッフ
美術/袴田長武+鴉屋 照明/工藤雅弘(fantasista?ish)
音響/平井隆史(末広寿司) 衣装/大野典子 舞台監督/大友圭一郎
イラストレーション /木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
制作/上田郁子(オフィス・ムベ)、石川はるか(ハイリンド)
夜と森のミュンヒハウゼン

第7回

夜と森のミュンヒハウゼン

私はスーツケースの中のあの人と夜を待っていた。
夜になって、森へ行くのを待っていた。
森の中を彷徨ううち、時間が少し巻き戻るかも知れない。
そしてあの人が目を覚ますかも知れない。
目を覚まして、何事も無かったように優しく微笑むかも知れない。
あるいはスーツケースの中身は実は私で、
そのことに気づいた時には、もう既に地中深く、
まるで生まれる前のような静かな眠りに戻ることが出来るかも知れない。
森の深い闇は時間を止め、あらゆる物事の輪郭をなくすと言う。
私達は闇に染みだして境をなくすことが出来るだろう。
私は夜の森を、最後の希望のように、ただ一心に思っていた。

会場
三鷹市芸術文化センター 星のホール
日程
2009年9月11日(金)~20日(日)
キャスト
伊藤総、佐藤銀平、佐野陽一、富沢たかし、石村みか、高畑こと美、
冠野智美
スタッフ
作・演出/早船聡 美術/袴田長武+鴉屋
照明/工藤雅弘(fantasista?ish) 音響/平井隆史(末広寿司)
衣裳/大野典子 舞台監督/大友圭一郎
イラストレーション/木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
制作/石川はるか(ハイリンド)、上田郁子(オフィス・ムベ)
片手の鳴る音

第6回

片手の鳴る音

雲間から射す陽光が海面を照らしていた。海は雨をすって一層青く満ちて見えた。
長くのびたタバコの灰が、母の膝に落ちて砕けた。化粧をしていない横顔。

母は泣いていた───
これは姉が一番覚えている母。幼かった僕には母の記憶はない。

会場
シアタートラム
日程
2009年1月24日(土)~25日(日)
キャスト
佐藤銀平、伊藤総、佐野陽一
冠野智美、白州本樹、伊藤留奈
スタッフ
作・演出/早船聡 美術/近藤麗子 照明/工藤雅弘(Fantasista?ish.)
音響/平井隆史(末広寿司) 衣装/大野典子 舞台監督/虎川英司+鴉屋
舞台監督助手/佐藤恵 本舞台監督/山下翼  大道具/松澤紀昭
イラストレーション/木村タカヒロ 宣伝美術/野島敏光
制作/上田郁子(オフィス・ムベ) 制作助手/石川はるか(ハイリンド)
MOTION&CONTROL

第5回

MOTION&CONTROL

風呂に入る前にする変な体操。
好きな曜日。好きな色。好きな道。
きれいな箸の持ち方。きれいな耳たぶ。
親友の悩み事。嫌いな奴の出身地。
学生の時のあだ名。男の数。
たまにする愛想笑い。
たまにする怒ったふり。

機嫌のいい声。機嫌の悪い声。
どちらでもない声。
曲がる癖。叩く癖。こする癖。
週末の予定。
あの時彼女のことを一番知っていたのは僕だった。
今、彼女のことを一番知っているのは誰だ。

会場
下北沢OFF・OFFシアター
日程
2008年8月19日(火)~24日(日)
キャスト
佐野陽一、伊藤総、佐藤銀平
松本理奈、白州本樹
スタッフ
作・演出/早船聡 美術/近藤麗子 照明/工藤雅弘 衣装/大野典子
音響/平井隆史(末広寿司) 音響操作/はらことり
舞台監督/大友圭一郎 イラストレーション/木村タカヒロ
宣伝美術/野島敏光 制作協力/石川はるか 制作/上田郁子
ライン

第4回

ライン

遠く見えるマンションにはまばらに灯りがともっている。
誰もいない部屋。テーブルに置かれたポークソテーが冷めていく。
蛍光灯のカサはオレンジ。古い埃が油で固まっている。
隣の町の市営球場で誰かがホームランを打ったらしい。
ナイターの照明が一瞬強くなった。

バッターの恋人は周囲に合わせて笑顔をつくる。
次の試合はもう来ないかも知れない。
真っ黒に見える筋は川。捨てられた金魚は大きくなって泥のミミズをあさっている。
車窓に見知らぬ町が流れて行く。
吐息で曇ったガラスをぬぐって自分の唇を見ていたら、
駅を二つ乗り過ごしていた。

会場
下北沢OFF・OFFシアター
日程
2007年11月20日(火)~25日(日)
キャスト
中島佳子、伊藤総、佐藤銀平、佐野陽一、白州本樹、柿丸美智恵
スタッフ
作・演出/早船聡 美術/近藤麗子 照明/工藤雅弘 舞台監督/大友圭一郎
衣装/大野典子 音響/平井隆史(末広寿司) 制作/上田郁子
美術監督/野島敏光 イラストレーション/木村タカヒロ
片手の鳴る音

第3回

片手の鳴る音

雲の隙間から陽がさし、突堤の先の海面を照らしていた。
雨を吸った海がいっそう青く満ちて見えた。

母はハンドルから手を離し、エンジンを切った。
波の音がかすかに聞こえた。

化粧をしていない母の横顔。
唇が乾いてすこし荒れていた。
長く伸びたタバコの灰が、母の膝に落ちて砕けた。

母は泣いていた。

これは姉が一番よく覚えている母。
幼かった僕には母の記憶はない。

会場
神楽坂die pratze
日程
2007年4月3日(火)~8日(日)
キャスト
佐藤銀平、伊藤総、佐野陽一
冠野智美、白州本樹、伊藤留奈
スタッフ
作・演出/早船聡 美術/近藤麗子 照明/荒井真理子 音響/穴沢淳
衣装/大野典子 イラストレーション/木村タカヒロ
Clearly

第2回

Clearly

東京・上野 -----

線路脇の古い雑居ビルにある小さなデザイン会社に勤める前田利子35歳は小さい時からためた貯金が500万円ある。

女手ひとつで育ててくれた母と住む家を買うつもりだったが、その母は数年前に他界してもういない…。

今はこれといって目標もなく、昼休みに公園で手作りの弁当を一人で食べ、鉄棒をするのが日課だ。

会場
神楽坂die pratze
日程
2006年9月20日(水)~24日(日)
キャスト
柿丸美智恵、斉田智恵子、伊藤総、佐藤銀平、佐野陽一、白州本樹
スタッフ
作・演出/早船聡 美術/近藤麗子 照明/谷垣敦子 衣装/大野典子
イラストレーション/木村タカヒロ
上石神井サスペンデッド

第1回

上石神井サスペンデッド

小学校のとき、僕の横にはけっこう気になるかわいこちゃんが座っていた。

給食のときである。その日の献立はイカリングフライで、僕は向かい合った彼女に一瞬見とれて、イカリングフライを噛み切らず、うっかりのどにひっかけてしまったのだ。

僕の窮地を知っているのか、微笑む彼女。
僕は彼女の映る目に涙をためて、のどからイカリングフライを万国旗のように取り出して見せたのだった。

これはあれから20年後の秋の話だ。

会場
プロトシアター
日程
2005年11月3日(木)~6日(日)
キャスト
佐藤銀平、佐野陽一、小林麻由子、花村さやか、岩崎正寛、白州本樹、伊藤留奈
スタッフ
作・演出/早船聡 美術/近藤麗子 照明/谷垣敦子 衣装/大野典子
宣伝美術/川岸陵